世界が終わる前に


帰ると言ったのは自分なのに、追いかけて来ない黒斗くんにイライラした。

そんな自分の身勝手さにも、イライラした。

あっさりと「ハセガワマオ」の言いなりになる黒斗くんが心底ムカついた。


でも、そんな黒斗くんを信じて期待していた馬鹿な自分に一番、腹が立った。


嫌悪感と悔しさで、胸がいっぱいになる。


それから鼻の奥がつんとして、口の中が酸っぱくなった。


そして、気がついたら温かい涙が頬を伝っていた。



『あんたも遊ばれてんのよ。あいつらみたいなのからしたら女はただの暇潰しみたいなもんだし、あんたみたいに騙されやすそうなのは“恰好の餌”なのよ』



こんな時に限って、思い出したくもない由紀ちゃんの台詞が蘇ってくるから、更に悔しさが増して涙が溢れ出した。


彼にとって、私はやっぱり“暇潰し”だったんだろうか。


< 190 / 202 >

この作品をシェア

pagetop