世界が終わる前に
私は“諦め”という手っ取り早い手段を利用して、それを言い訳にしながらずっと現実から逃げて生きてきたんだ――。
でも、そうする事で私は、自分自身を守っていた。
しかし、それは自分自身が、壊れてぼろぼろに傷つく前にある一種の自己防衛をしたまでに過ぎない。
神懸かり的な必然を嫌い、平凡な偶然を好む私は、とてつもなく卑怯で臆病な人間だろう。
偽りだらけのこのくだない馬鹿げた小さな世界で生きる術を、浅はかな私は大きく履き違えていたのだ。
この小さな世界は限りなく不透明で、未完成な私たち馬鹿な人間に、現実という鋭い牙を剥きながら容赦無く襲い掛かり、暗い地の底へと突き落とすんだ――。
その揚げ句、ずる賢さを得た人間は、嘘を覚え、他人を欺き、愛を裏切り、世界をも罵り、愚か者へと成り果てるのだ。