世界が終わる前に


酷く不穏さの漂う空気を拭い切れずに、私は怪訝(けげん)を孕んだ瞳を隠しもせずに目の前の相田さんを見つめた。



「ああ、もしかしてあたしの事わかんないとか?」



けれど、相田さんはそんな私の事なんて気にもしてないらしく、あっけらかんとしながら「あたしら話した事ないもんね」なんてしみじみと言ってみせた。


あっぱれ、相田。

さすがだ。


でも、そんな相田さんは存外、私が思うよりそこまで悪い人じゃないのかもしれない。


更に間髪入れずに「あたし相田。相田 由紀ね。よろしく」なんて、わざわざ簡単な自己紹介までしてくれた綺麗な笑顔を浮かべる相田さんに対して、少し申し訳なく思った。


だから私はそんな相田さんに「あ、うん」とだけ急いで答えたのだけれど、思っていたよりも幾分声が小さくなってしまったので、彼女にちゃんと聞こえたかどうかはわからない。


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