世界が終わる前に
完全に臆病風に吹かれた私は固唾を飲んで、相田さんの次の言葉を待った。
そして、相田さんのリップグロスでテカテカと光る唇から紡がれた台詞に、そんな私の被害妄想は確信へ変わった。
「うん、だからさ。今日の放課後、空けといてくんない?」
どうやら本格的に呼び出されてしまったらしい私は、本気で何をされてしまうんだろう。
しかし明らかに地味なガリ勉グループの私が、派手ギャルグループの相田さん直々の“お誘い”を断れる訳もなく。
何も答えない私にいよいよ眉を潜めはじめた相田さんに、私は慌てて首を縦に振るしかなかった。
それを見た相田さんは、酷く満足げな様子で「んじゃ、また放課後ね」と、恐ろしい程に不敵な笑みを浮かべると、くるりと私よりもかなり丈の短いスカートを翻(ひるがえ)して前方へと向き直った。
次の瞬間ふと強張っていた全身の力が抜け、血の気とやらがサーッと勢いよく引いていくのが嫌でもわかった。