世界が終わる前に


そう独り言のように呟くと、今度はポーチを取り出して、すっぴんな私の可哀相なお顔にお化粧をしはじめた。


すると、相田さんは「うわっ、肌ツヤツヤじゃん!つかマジ羨ましい通り越してウザいんだけど!」なんて褒め言葉なのか皮肉なのか、よくわからない言葉を口にする。



「これならファンデなんかいらないかー。ならアイメイクとチークとグロスだけでいいね」



相田さんの独り言を聞き流しつつ、何故こんな理解とは程遠い状況に自分が陥ってしまったのか、考えてみたけれど。


……勿論、答えなど出る訳もなく。



「なんだ、あんた案外こういうの似合うんじゃん」



私の心情なんて露知らずの相田さんは最早、厭味のようにも聞こえるお世辞紛いの、よくわからない事まで言いはじめた。



そんなこんなで、相田さんの手によってあれよあれよという間に私は、たった数分という短い時間で大変身を遂げた。



……これは一体、どういう事なんだろう。


いや、本気で。


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