世界が終わる前に
「いいじゃん。可愛い可愛い」
何故だか、相田さんたちにシメられるはず(予想では)が……親切にも可愛くしてもらうという不可思議な展開を迎えた、今日という人生最悪の一大事が起こる日。
全く想像も、予想さえもしていなかったような展開に、驚きというよりも不安を隠しきれない。
…――が、相田さんに渡された手鏡で見た初対面の自分のお顔は、かなりの変貌ぶりで……思わず見とれてしまったのは事実で。
だけど、そんな私の驚異的な変貌ぶりにも驚愕したのはやっぱり自分だけで、いつの間にか準備を整えていた相田さんがポンと私の肩を叩いた。
「んじゃ、行くよ。マジで時間かなり押しちゃってんだよね」
ぼやーっと変身した自分を眺めていた私を急かすように言った相田さんは、更に少し冷めた声色で「ほら鏡、早く返して」と私に掌を差し出した。
そんな相田さんに、私は呆気に取られたまま鏡を手渡すと、一番気になっていた事を彼女に聞こうとやっとの事で口を開いた。
「あ、の……」
絞り出した声は思いの外、酷く震えてしまった。