世界が終わる前に


「マジでこんな奇跡、あんたにはもう二度とないかも……ってか確実にないんだからもっと喜んだらどうなわけ?」



前を向いたままペダルを漕ぐそんな相田さんの少し不機嫌さを孕んだハスキーな声が、何だか私には遠くで聞こえているような気がしていた。



それよりも…――漆原黒斗って一体、誰なんだろう……とか。


ていうか……そもそも、ナニがどれだけ奇跡なんだろう……とか。


相田さんは“もう二度とないんだから”なんて言ったけど、私は逆にその二度目がもしあったとしら、なにがなんでも絶対に、死んでも阻止すると思う。


まあ……少しばかり大袈裟かもしれないけれど。


だって、こんな事が二度もあるなんて……私にとっては、どう考えたって質(たち)の悪い悪夢でしかない。



けれど――…



「まあ、もしもあんたが万が一にでも“あの”漆原黒斗に気に入られたら、二度目もあるかもしんないから頑張りな。一応あたしらもちゃんと協力してあげるつもりだからさ」


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