世界が終わる前に
この世界から、逃げ出せたのなら
進学競争が過熱する近年――“受験戦争”なんて、聞いただけでも私たち子供としては嫌気がさすような単語が、幾つも飛び交う“学歴社会”などと称される現代社会。
――そして、それは我が“朝吹(あさぶき)家”も決して例外ではなかった。
俗世間で所謂“教育ママ”なんて、小洒落た呼称で呼ばれちゃったりしているのが、まさに我が家のボス――私の母親だった。
母は教育熱心どころか最早、暴れ馬のような白熱状態で、そんな母の口癖はいつも決まって『世の中ね、学歴が全てなのよ』だった――。
そんな高飛車のような母の口調が、私はあまり好きじゃない。
というより最早、私の中では軽いトラウマと化していたんだと思う……。間違いない。
それでも――異常だとか、普通じゃないとか、そういう感覚が微塵も私になかったのは、まさに異様なまでに教育熱心だった母の家庭教育の賜物(たまもの)である。