世界が終わる前に
てか本当にこの人中学生!?
やっぱり年齢サバ読みしてるんじゃないの!?
それとも不良はみんなコーヒー飲めるの!?
別に偏見とかじゃないけどね!?
そんな心の突っ込みは勿論、まさかこの期に及んで『コーヒー苦手なんです』なんて初対面の、しかもわざわざ面倒な“飲み物係”を自ら買って出てくれた寛大な彼に言える訳もなく、
「……ごめん、なさい」
とりあえず小さく聞こえない程度に、そう呟くのが私の精一杯だった。
それから、大量のミルクとガムシロップをなるべく両手に持てるだけ持った。
これが、とりあえずこの場を上手く乗り切るための最善の策。
別に大好きなメロンソーダが飲めなくても、仕方ない。
今日は諦めるしかない――。
そう思って、両手いっぱいにミルクとガムシロップを持ちながら、横に立つ彼が手際よく次々と十二個分のアイスコーヒーをグラスに注いでいくのを、ぼんやりと見つめていた。