世界が終わる前に
爽やかな白いワイシャツを肘まで捲りあげたそれから伸びた逞しい彼の腕と、大きくて細長い綺麗な指先と整った横顔に、ついつい見惚れてしまった自分に驚いた。
……“苦手な人種”。
でも、大人びたクールな彼が席にいる“あいつら”とは、どうにも違う“人種”のように思えてしまうのは、一体どうしてなんだろう……?
どうしてこんなにも胸がドキドキするんだろう……?
「…――お客様、そちらのお飲みもの、お席までお持ち致しましょうか?」
不意に。あきらかに無理のあるグラスの数を見兼ねたらしい、女の店員さんが優しく話し掛けてきてくれた。
「ああ、悪い。頼む」
「お席はどちらですか?」
「あそこ」
やっぱりぶっきらぼうに言いながら、フロアの一番奥にある私たちの座席を、筋肉質な腕とは裏腹な長細い綺麗な指で差した彼。
そんな彼は、意外にも店員さんに対する態度は良くもないけど、悪くもなくて……正直、というかやっぱりというか、何だか拍子抜けだった。