世界が終わる前に
なんか今時の中学生の不良ならもっとこう……『うっせーんだよ!』とか『さっさと運べ!』とか……“ああいう奴ら”はそういう事を店員さんとかにも平気で言うもんだとばかり思っていた。
何だか彼に対して偏見を持ってしまった自分がやっぱりどうしようもない愚か者に思えて、心の中で隣に立つ彼に謝っておいた。
「かしこまりました。お持ち致しますね」
「あ、悪い。後これも、頼む」
そう言い足した彼が“これ”と指差したのは、私の両手いっぱいに持っていたミルクとガムシロップで。
「……へ?」
「ふふ、かしこまりました。ご一緒にお持ち致しますね」
私は訳もわからず、優しく微笑んでくれた店員さんの持つ、既に人数分のグラスが乗ったトレーに、両手いっぱいに持っていたミルクとガムシロップを慌てて置いた。
そんな風に、呆然としたまま席に向かう店員さんの背中を眺めていた私に、隣にいた彼が低い声で呟くように言った。