世界が終わる前に
何かを察したらしい彼は無表情のままで、それを崩す事なくこちらを見下ろしながら言い放つ彼の眼差しは相変わらずのそれで、酷く居た堪れない思いに駆られた私は深く頭を下げて謝った。
「ご、ごめんなさい……コーヒー苦手で……ごめんなさい」
「だから、別にそんな事でいちいち謝らなくていい」
「はい……あ、えっと……ありがとうございます」
「いいから、早く好きなもん選べよ」
「あ、はいっ……!」
言葉とは裏腹に穏やかな声を出す彼は……優しいかと思えば、酷くぶっきらぼうで、冷たい眼差しを私に向けてくる。
……変なヒト。
だけど、きっと根はとても優しいヒト……そう思った。
その証拠に……やっぱり優しい彼は、私がグラスに注いだメロンソーダに、何も言わなかった。
いつもは周りから『ガキ臭いからやめなよ』とか言われたりするのに、この人は言わなかった。
あれ程に『来なきゃよかった』と感じていたこの“合コン”に、ほんのちょっぴり『来てよかった』と思った瞬間だった。