世界が終わる前に


暫く沈黙が続くと、それっきり彼はうんともすんとも言わなければ、もう私に話し掛けても来なかった。


何だかホッとしたような、残念のような、そんな不思議な気分がして酷く居心地が悪くなった。



……もうこんな変な気持ち二度と味わいたくない、と。



いつの間にか合コンは、ファミレスからカラオケに場所を移動する事になったらしく、私はそんなワイワイと賑やかなみんなを横目に、このまま気づかれないように帰ってしまおうと、密かに決めた。


お会計は意外にも男の子側が出してくれて、正直助かった。




…――ファミレスを出て、繁華街を歩き出したみんなの背中をぼんやり見つめた後、私はゆっくり踵を返した。



これで、やっと帰れる。


もう金輪際、相田さんもあの子たちも男たちも関わらないでいい。


少しあの彼と会えなくなるのが寂しく思うのは、やっぱりこのムシムシとした残暑の暑さの所為なんだろう。




そのはずだったのに――…


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