世界が終わる前に
「抜けようぜ」
「……えっ!?」
彼の予想外の台詞に、私は思わず叫んだ。
「あ?なんか文句でもあんのかよ?」
「ぬ、抜ける!?」
あまりにも突拍子のない彼の台詞に、更に言葉を立て続けに叫んでしまった。
抜けるって……私と?
一体どうして?
「ああ」
「ど、どうして……ですか?」
すると、彼はフッと口元を緩めると「意味はわかってんのか」とやっぱりクールな雰囲気とは裏腹に、穏やかな低い声を出した。
ふと彼が見せたそんな意外にも柔らかい表情に、私の胸の鼓動が加速したのは言うまでもない。
「あんた、どうせ暇なんだろ?」
「……えっ?」
「だったら抜けようぜ」
そして「おら、行くぞ」と呟いた彼の低い声は、やっぱりぶっきらぼうな冷たいそれで。
でも、少し強引に私の腕をグッと掴んだ彼の掌は驚く程に、熱かった。