世界が終わる前に
「あ、の……えっと、どこに行くんですか?」
「……別に、考えてねェけど」
「えッ!?」
考えてないって!?
ノープランって事ですか!?
この人まさか天然の類い!?
それでも、さらりと言い退けてみせた彼は本当に何も考えてなかったらしく。
突然呼び止めた私を怪訝に思ったのか、そのクールな雰囲気とは不釣り合いなキョトンとした表情を浮かべている。
そして――…
暫く私と彼の見つめ合いが続いた後、いきなり彼は「ああ、」と低い声を出した。
「どっか行きてェとこがあんのか」
「……はいッ!?」
まさか本気の天然かい!?
どうしてそうなったんだい!?
妙に納得したように疑問を私に投げ掛ける彼には、さっきから本当に驚かされてばっかりだ。
私は『どこかに行きたい』だなんて一言も言ってないのに……。