世界が終わる前に
「……あ、の」
「あ?」
言いながら少し乱暴に眉を潜める彼の表情が、何だか堪らなく可愛い。
冷たい眼差しとは裏腹な穏やかで低い声が心地好い。
……ああ、どうしよう。
どうしてこんなにも彼は私を惑わせるんだろう。
恋愛経験のほぼ無い私にとっては、彼があまりにも魅力的で、少し恨めしくなる。
「えっと……図書館に、行きたいです」
とりあえず、今一番行きたい場所を思いついたまま試しに言ってみた。
けれど、
「トショカン……?」
彼曰く“図書館”というワードに驚いたのか意外だったのか、あからさまなまでに彼の形の良い眉に、深く縦皺が寄る。
まあ彼の表情を見るからには、恐らく両方、だろうか。
でも、初めに私に聞いたのは紛れも無い彼自身で、私はただ自分の行きたい場所を素直に答えただけだ。