世界が終わる前に
そんな二度目になる彼との間での沈黙の再来は、数分が数時間に感じる程のとても長い時間のように思えた。
夕日でオレンジ色に染まり始めた繁華街のド真ん中で、黙ったまま見つめ合う男女(彼と私)。
そんな私たちは、傍から見たら一体どう映るのだろう。
彼の艶やかな黒髪が背景に浮かび上がる夕日に照らされてキラキラと光ってる。
私はその澄んだ黒い瞳の奥に映り込む夕日に染まった自分の姿を、ぼんやりと見ていた。
それから暫くして沈黙を破ったのは、意外にも彼の方だった――。
「行くか、……トショカン」
ぼそり、と呟かれた彼の穏やかな低い声が私の耳に届いた。