世界が終わる前に
目の前に座っている彼も、少し退屈そうに頬杖をつきながら同じ景色を眺めている。
いつの間にか景色でなく、そんな彼を眺めていた私はハッと我に返ると、机に広げていた英語訳の宿題に慌てて取り掛かった。
静まり返る館内には、紙の擦れる音とシャープペンシルを走らせる音以外聞こえなくて。
いつ目の前の彼に、私の心臓のドキドキが伝わってしまうんじゃないかと思うと、ヒヤヒヤして落ち着かなかった。
時々感じる彼の視線には気づかない振りをして、電子辞書と教科書を交互に見ながらノートに英語訳を書いた。
極度の緊張からか、ぷるぷるとシャープペンシルを持つ指先が震える所為で、ノートに綴られる文字はまるでミミズの這ったようなそれになってしまう。
自然に口からハァと深い溜め息なんかが零れてしまうのも、仕方がない。
もう一度ちらりと彼に視線を向けてみれば、やっぱり退屈そうな横顔がそこにあった。