世界が終わる前に
…――それから一通り英語訳とついでに日本語訳も終わり、んーっと顔を歪めて大きく伸びをした瞬間、ふと視界に入った彼の存在を思い出した私は、慌てて姿勢を元に戻した。
彼の存在を忘れるくらい集中してしまうなんて、我ながら馬鹿すぎる。
何やってんだろ……。
せっかく合コンを抜け出してまでこうして一緒に図書館へ来てくれたのに……。
恥ずかしくて黙々と机の上を片付けていると、フッと笑ったような彼の穏やかな吐息が聞こえて、私は更に恥ずかしくなった。
「シュクダイ、もう終わったのか?」
「あ……は、はいっ」
不意に低い声に話し掛けられたので、慌てて俯いていた顔をパッと上げて返事を返した。
視線の先にいる彼は酷く優しげな表情を浮かべていて、やっぱりクールな雰囲気と冷たい眼差しとは裏腹なそれだった。
彼がやけに大人びて見えてしまうのは、もしかしたらそのギャップの所為かもしれない。