世界が終わる前に
「腹、空かねェ?」
「えっ?」
「飯、食い行くぞ」
「は、い?」
…………め、飯?
突拍子もない彼の台詞に、私は目を数回瞬かせた。
訳がわからなくて、思わず怪訝を孕んだ視線を向けてみると、
「あ?飯くらい付き合えよ」
低い声を出した彼は不機嫌なのか少し乱暴に眉を寄せていて、その仕種がやっぱり可愛いと思えて胸がキュンとした。
もしかしたら私は、何かの病気に掛かってしまったのかもしれない。
しかも、かなり重度の。
「……は、はい」
「行くぞ」
そう言って立ち上がった彼を、私は思わず呼び止めていた。
「あ、あのっ!」
すると、彼は「何?」と不思議そうに眉を寄せながら私の顔を覗き込んだ。
「あの、えっと、なっ、な、名前っ」
「名前?」