世界が終わる前に
まるで嵐が去った後のような静けさを残していった彼……いや、漆原黒斗。
私は暫くの間、口をだらし無くぽかんと開いたまま、目を頻りにパチパチと瞬いていた。
……な、何だったの?
またなって次があるって事?
そりゃあ、また会えるのは……ほんのちょっぴり嬉しいけども!
謎だらけでかなり蟠(わだかま)りが残ったけど、私は何だかとっても不思議な気分で、無性にワクワクした。
ただやっぱり彼とまた会えると思うと、性懲りもなく胸がときめいた。
私は緩みっぱなしのにやける頬を抑え切れずに、ぼんやりと夢心地のような気分のまま窓の外を眺めながら立ち上がろうとした、その時――…
「…――奈緒?」
彼とは違う性質の柔らかい低い声が、私の名を呼んだ。