世界が終わる前に


彼と同じ毛質のさらさらとしたお兄ちゃんの黒い髪は、ほんの少し茶色が混じってる。


ちょっと違うのは、お兄ちゃんの髪の毛の方が彼のそれよりもほんの少し短いとこで。


黒縁の何故かお洒落に見えてしまう眼鏡の奥にあるあの至極冷淡な瞳は、未だに慣れない程の冷たさを孕んでいて。


長身で抜群なスタイルに、有名私立男子校のブレザーが、よく映えている。


神経質そうな眉と口元、シャープな輪郭、筋の通った鼻、くっきりとした二重瞼。


その整いすぎた容姿に、ここにいる誰もが目を向けてしまうのは、当然と言えば当然の事で。


きっと誰も私がこの人の妹だなんて、微塵も思わないのだろう。



「お兄ちゃん?」


「脅されたのか?」



言いながらお兄ちゃんは、物凄い剣幕で椅子に座っている私に詰め寄ってきた。


……怖ッ!



「……は?」


「何かされたのか?」


「はい?」


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