世界が終わる前に
「……うん、そうだよ。今日さっき知り合いになったの」
「さっき?お前、正気かよ?」
「どうして?」
「……あんなのやめとけ、関わるな」
「そんなふうに言わないで。優しいヒトだったよ?そりゃあ、見た目はちょっと不良ちっくだけど……」
「ちょっと?どっからどう見ても不良だろうが」
「……お兄ちゃんには関係ないでしょっ」
ついムキになって、大袈裟に声を荒げてしまった事をすぐに後悔した。
お兄ちゃんの顔が見れなくて、表情を見るのが怖くて、バツが悪くなった私は逃げるように下を向いた。
「奈緒」
その酷く優しい声色に何故か泣きそうになった。
「……な、に?」
「とにかく、あれはやめとけ。母さんたちだって心配するだろ?」
諭すようなお兄ちゃんの台詞と柔らかい物腰に、とうとう私は何も言えなくなってしまった。