世界が終わる前に


一瞬、何かの見間違いか単なる冗談だろうと思ったが、悪戯っ子のようにはしゃぐ麻子ちゃんの様子からして嘘や冗談を言っている風ではない事が窺えた。



「えぇッ!?」



やっと意味を理解した私はワンテンポ以上、遅れて反応した。

思わず声が上擦ってしまったのは、仕方がない。



「遠目からだったんだけどね、奈緒ちゃんの彼氏すっごくかっこよかったね!羨ましい!」


「か、彼氏……!?」


「うん!腕組んでラブラブ歩いてるの見ちゃった!彼氏でしょ?」



……とりあえず“ラブラブ”というイメージだけは、消して欲しいものである。


それより、麻子ちゃんが言ってるのは一体どっちなんだろう!?

お兄ちゃんか、漆原黒斗か、どっちを彼氏と勘違いしちゃってるんだろう!?



「いや、あ、あのね?麻子ちゃんには悪いんだけど、それは多分、」



…――お兄ちゃんだよ。


漆原黒斗と答えたら更なる誤解を招くと思って、無難にそうやって麻子ちゃんに言い訳を言おうとしたんだけど、


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