美術部男子
入部
それはもう、美しい絵だった。
芸術なんて自分には理解できないものだと思い続けて十五年。
ここまで惚れこんだ絵は初めてだった。
抜けるような空の青、触れられそうなくらいの生気を放つ若葉の緑。
おもわず顔を近づけて、何十分も見つめ続けた。
そして、絵の下に掲げられた、作品名のプレートを食い入るように見つめた。
作品のタイトルと、絵を描いた人の名前。そして、高校名。
「私立・・・・麗華高校」
その名前を、深く頭に刻みつけた。
私立、麗華高校。
偏差値は私の靴のサイズ×二・五倍ほど。
運動部の全国大会常連校であり、文化部でも好成績を多く残している。
名前も凄いが、一年にかかるお金も凄い。
麗華高校のパンフレットを読みながら、入学金の額だけでも目を疑った。
無理かもしれない、と早くも諦めかけたが、よくよくパンフレットを読むと
「成績が入学時で六位以内、入学後常に学年五位以内を保てる者(Sクラス)。
上記の者は、入学金、学費全額免除とする。」
そこから、私は入試まで気持ち悪いほど勉強をした。それはもう、文字を食べるくらい。
学校のテストの点はみるみる上がり、常に上位をキープできるようになった。
はじめは「絶対落ちる」と言われた先生にも「受かる」と言ってもらえるようになった。
そこからまぁ、色々なことがあるのだか、特にこれと言って広げられる話はない。
結論から言うと、私は無事麗華高校に六位以内で合格した。
次は、私が初めて美術部の活動へ参加した時の話をしよう。