ちぇりぃ★〜姉と弟の恋模様〜
コピー室から柏木さんのデスクに戻り、何事もなかったかのようにパスポートの申請用紙の記入をすませ、レッスン室へ向かった。


「ごめんなさぁい!待たせちゃって」


Pearlの前だからアオイちゃんでなければならない。


今、オレがどんな気持ちであろうと。


「遅かったわね、アオイ?待ってたのよ、レッスン始めましょ♪」


「うんっ」


佑季に楽譜を返して、声が枯れるまでビッチリ3曲練習し、8時前に柏木さんが迎えに来てくれて、オレ達を家まで送り届けてくれた。


だけど。


どんな顔で果夜に会えばいい?


知ってしまった事実を抱えて。


姉ちゃん、と。


わざと姉弟のラインを引かなければならないのか…?


まだ。


まだ気持ちの整理がつかないオレは、アパートの前から晩メシを待っているだろう果夜に、


“今日、ちょっと遅くなるから先にメシ食ってていいよ”


と、メールして、大通りに出るとタクシーをつかまえた。
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