ちぇりぃ★〜姉と弟の恋模様〜
「オレ、コーヒー買ってくる」


自販機で2本コーヒーを買って、お互い何も言わず、苦い液体を流し込んだ。


「蒼斗?」


「うん、仕事中だもんな。あのさ…」


鞄からコピーした戸籍を、黙って母さんに差し出した。


「これ…」


「話、聞かせてくれる?」


「そうね…」


母さんは大きく息を吸い、戸籍のコピーを折りたたんでオレに渡した。


「これ、どうしたの?」


「夏休みに《チェリー》で写真集の撮影があるからパスポートが必要になった、って果夜に話したら、オレに戸籍を取りに行くなと言った。それは果夜が直接マネージャーに渡した戸籍をオレが見つけちゃってとったコピーだよ」


「そう…。果夜は…果夜は覚えていたのね…」


「どういう事?」


「蒼斗はね、私が20歳の時、結婚できない相手との間に産まれた子よ」


「それって…不倫て事?」


「世間一般では、そう言うわね。でも母さん、その人が妻子持ちだって知らなくて…。蒼斗が産まれた時に初めて事実を打ち明けられたの。騙された、って事より、母さんはその人に本当の家族と幸せになってもらいたくて別れたわ。愛してたの」
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