白緑蝶"Ice green butterfly
「ああ、俺は最低の人間だ
 
 あの時も、俺は結局
 おまえから逃げた・・・」

私の左手に触れる、真澄の手

そう、あの時から、私の左腕
に存在する傷痕。

刻まれた、間違った愛の形。

真澄との別れを決定付けた日
のことを、私は今も鮮明に
覚えている。

あれは、古い建物の
アパートの一室。

暗い中、足場もない程に
荒れ果てた部屋。

割れて散乱する古い窓ガラス。

私の左腕から止め処なく
流れる真っ赤な鮮血
ポタポタと、床に垂れる。

私を抱き締めながら、真澄は
言った。

「全部、おまえが悪い

 俺を不安にさせる
 オマエが、いけない」
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