ウルトラスマイルを君に
高校生になった鈴奈(れいな)と修太(しゅうた)は高校は違うけれど登校は一緒。
「遅刻してもしらないからな。
はやくしろよ!」
「シュウはなんだかんだ言って待ってくれるところが、優しいんだよね。」
胸まであるかないかくらいの長い髪をたらし、ちょっと得意げな笑顔でちょっと背のちいさめの女の子が玄関から出てくる。
その細い腕には、絆創膏。
「鈴奈、またお母さんとケンカでもしたのか?」
「うん。ちょっとね。昨日8時過ぎに帰ったんだけど連絡するの忘れててさ〜。
また怒られちゃった。それにしてもひどくない?そんなに怒るかってね〜。」
困ったような笑顔を見せる。
この笑顔を見る度に修太は胸が痛くなる。
つらいことがあるなら、無理して笑わなくてもいいのに。
鈴奈は小学校の頃から活発でリーダー的存在だった。
その分勝ち気で負けず嫌いなところもあるが、一番に周りのことを考えられるし、頭も良いので、友達もいっぱいいるし、先生たちからの信頼も厚い。
しかし、それはいいことばかりではなかった。
それなりの容姿も持ち、秀才で、人気もある。となると、他の女子からの嫉妬はつきもので、仲間外れにされたり、無視をされたりと、いじめとまではいかないがそうゆうことも度々あった。
鈴奈の家は両親が離婚していて、お母さんが女でひとつで鈴奈と妹の亜衣を育てている。
母も疲れがたまると鈴奈に当たったり、少し暴力を振るうこともあった。
そんなことの繰り返しでも鈴奈は明るく、以前から少しも変わらない。
いつでも笑顔で、周囲をなごませていた。
修太はそんな鈴奈の幼なじみ。
背は人並みで低くも高くもなく、顔はきれいな顔立ちと言う訳でもないが、女子からは人気もある。
鈴奈とは幼稚園の頃からずっと一緒で、鈴奈の今までのこと、家庭の事情も知っている。
鈴奈の母とも仲が良く、たまに遊びに行ったりきたりと、兄妹のような関係。
と、
思っているのは鈴奈だけ。