おやゆび姫
Prologue
もうちょっと早く
王子様に出会いたかったよ。
『めっちゃ可愛い、花恋』
あたしの大好きな声が
何度も、何度もリピートされる。
聞こえるのは、あたしを「好きだ」って「可愛い」って言ってくれる
大好きな声。
でも、目の前に居るのは、王子様じゃないね。
「花恋は俺と結婚するんだ」
そう言って笑うのも
王子様じゃないね。
「うん、わかってる」
この場所から抜けられたら
外の世界に出れたら
いますぐ王子様に
「好き」って言いたい。
神様、お願い
ここから出して。
あたしを助けて。