ウォルフとワタシ
◆「野蛮人ウォルフ!」
――‥なんて、
いつも期待してる私が馬鹿なのかもしれない‥‥‥。
「貴様ッ!誰に剣を向けているのか分かっているのかッ?!」
「――‥あぁん? テメーこそ俺様にぶつかっといて生きて帰れると思うんじゃねぇぞ?」
目の前には、
シャラン!
シャラン!
鋭い音をたてて剣を抜き始める二人の男。
――と、その近くにある木の影に、いつもどおり身を隠す私。
こんなに平和な国を旅してるってのに、私の日常は見てのとおり騒がしくて仕方がない。
それもこれも全部、
目の前に居るこの男のせい。
銀色の狼のような容貌をした剣士。
瞳は薄い水色。
長身で大きな身体は逞しい。
その名前はウォルフ。
ミドルネームもラストネームも知らないこの男と私は、二人で目的のない旅をしている。
その話はまぁ置いといて‥。
今日中に今夜泊まる予定のキアシュへ着かなければならないのに、この調子だと今夜も野宿決定だ。
はぁ、と溜め息をついてると、
――ちゅどーん、ちゅどーん。
爆発音みたいな効果音が近づいてくる。