彼岸と此岸の狭間にて
家政婦がケーキと紅茶を、そして佳奈が厚めのスクラップブックを持って来る。            
「どうぞ召し上がれ」              
紅茶を飲む葵と香澄。               
「これは隆道の父が『自分の先祖』について調べていた物なんだけど、こんな物でよろしいかしら!?」                     
「はい、結構です。拝借しても…」                    
「ええ、どうぞ…」               
手渡された葵は早速ページを捲(めく)る。香澄が脇から覗き込む。                
(凄いきれいに整理されてある…)                    
そこには年代順に写真や新聞の切り抜き、またはコピーした資料が添付されてあった。                                
葵は問題の『幸乃新』のページを見る。                  
『1.詳細不祥
 2.土佐藩を脱藩したものと思  われる。理由は、人殺しか!  ?
 3.江戸在住中に『たき』と知  り合い、二男一女をもうける
 4.享保10年 死亡。
  自害とされるが藩の刺客に殺  された可能性あり。
 5.追加1
  宝承寺の記録では自害とあり
 6.追加2…宝承寺の先先代の  話
  浪人中に稼いだ多額の金をど  こかに埋めたとの事』             

(これだけ?やはり300年も前の事を調べるのには限界があるよな!?)             
「どうもありがとうございました」                    
「お役に立ったかしら!?」

「はい…」                   
「ごめんなさいね、これだけしか見つからなかったの。祖父が生きていればねぇ…」                                  
家政婦が近づいて来る。

「奥様、お時間が…」              
「もう少しお話をしたかったんだけど、これから出掛けないといけないの、ごめんなさいね」
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