彼岸と此岸の狭間にて
「山中さんの今日のご予定は?」

『家で静養する程度ですけど…』

「あのぉ、もう少しお話を伺いたいので、これから家の方に行っても良いですか?」                      
『えっ、家って、この家、郡山の?』                   
「そうです」                  
『それは構わないけど、葵君は大丈夫なの?』

「僕は今、春休みなんですよ」

『そう。でも、親御さんの許可をもらってからの方が…』

「その点も大丈夫です…じゃ、電話番号を教えて下さい……0246―▲▲―…。はい、わかりました。郡山駅に着いたら電話します」                       

いつの間にか受話器を持つ手に汗を掻いていた。              
「随分と長い電話だったわね!?」                   
「母さん、おれ、これから、郡山に行って来る」             
「良いわよ」                 
「えっ!?」                 
「あはははっ、反対すると思った!?だって、会話の内容、全部聞こえるんだもの」                     
「それじゃ良いんだね!?」            
「但し、泊まらずに帰って来なさいよ!?相手の方の迷惑になるから…」              
「分かった」                              

葵は急いで身仕度を整える。                       

「葵、お金は?」               
「大丈夫だと思う」              
「これ持って行きなさい!」                      
母親が2万円を差し出す。           
「サンキューッ!」              
「気を付けて行って来るのよ!」

「うん、行って来ま〜す」
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