彼岸と此岸の狭間にて
山中の招きに応じて卓袱台(ちゃぶだい)ひとつの居間の部屋に上がって座る。            
(畳だ!祖父ちゃんの家を思い出すなあ!)                            
「何もないけどゆっくりしていってよ」                  
「ありがとうございます。山中さんの好きな物が分かりませんでしたので…」             
バッグの中から『クッキーの詰め合せ』を出す。              
「そんな…気を遣わなくてもいいのに…ありがとう」                        

山中は台所に立ってお茶を煎れて来る。                  
「ありがとうございます…お体が悪いという事ですが!?」

「心臓が少しね…」               
山中はお茶をひと口ゆっくりと飲む。                   
「葵君、聞きたい事があれば…」

「あっ、はい!」                 
バッグから『巻き物』を取出し、卓袱台の上を片付け広げて見せる。                 
「この事だったんだ!?」            
「ご存じだったんですか?」

「長谷部さんからその存在は聞いていたから…」              
「はい、それで…」               
葵は自分の家の墓の最初が『葵』でなかった事、土門と菱山の奇妙な死について話した。                      
「う〜ん、その辺の事は私にも分からないなあ…」              
「長谷部家と山中家の関係というのは?」                 
「これも詳しくは分からないけど、長谷部さんの言葉に寄れば『命の恩人』らしい」                     
「山中さんが長谷部さんを助けたっていう事ですか?」

「そうらしいよ」
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