彼岸と此岸の狭間にて
いよいよ核心に迫る。              
「紫馬家と山中家の関係というより、『紫馬葵』と『山中光太郎』との関係については…?」                  



「『過去が証明する物』…」

「どういう事ですか?」 

「『過去なくして過去はなく、過去なくして実存なし』…」

「山中さん!どうしたんですか!?」                   
「えっ!なに?」                
「今、理解出来ないような事を言ってましたよ!」             
「私が…ははははっ、そんな馬鹿な!!私にそんな学はないよ!」

「でも…」                   
(一瞬、人格が変わった!!)

「で、何だっけ?」               
(紫馬家と山中家の関係は一旦諦めよう!)               

「この『巻き物』の最後の文の意味は?」                 
「『彼岸と此岸の狭間にて…』。ん〜っ、分からないなあ。これ『徳蔵』さんが書いたの?」

「そうらしいんです…徳蔵さんとは会った事があるんですか?」

「いや…ない!」                   
「山中さんのお父さんやお祖父さんから何か聞いた事ありますか?」                 
「何か聞いた事はあるかもしれないけど、今となっては覚えてない。悪いねえ」            
「最後に、山中家の墓の場所を教えて下さい」               
「原宿の『明願寺』…」                
「『明願寺』ですか!?」            
「私以外はみなそこに入っているよ…ははははっ…」                        
懐かしい柱時計が午後8時の『時』を知らせる。
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