彼岸と此岸の狭間にて
『私は必ずもう一度訪れる。だが、それは夢の中かも知れない  紫馬 葵』             
(なんだこれ!?意味が分からない。『紫馬葵』という人物はやはり存在した…でも『夢の中で再び訪れる』とはどういう事だ!?う〜ん…)             
「何かありましたか?」             
「いえ、別に大したものは…」                      
住職に言おうか迷ったが、言っても答えは出ないだろうと考えて止めにした。             
「正徳2年って何年か分かりますか?」                  
「正徳2年ですか!?ここではちょっと…お寺に戻って調べますか?」              
「お願いします」                
葵は花を供え、水を掛け、焼香し手を合わせる。                       
それから住職と伴にお寺に戻って行った。                                                                                                                                         



「1712年ですね」              
「1712年ですか!?」            
(享保10年が1725年だから、山中さんは土門や菱山より13年も前に亡くなっているのか!?)              

葵は本堂の中で煎れてもらったお茶を前に座っていた。             
「こちらには山中家に関する資料とか残ってないでしょうか!?出来れば古い物が良いのですが!?」              

「ちょっと見てきましょう!」

住職は再び席を外していった。                                                                                  
待つ事20分。住職が手に冊子のようなものを持って戻って来た。

「残念ながら、古い物は見つかりませんでした」
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