彼岸と此岸の狭間にて
「なんと本当の目的は新井様と間部様殺害!!我らはその先兵隊に過ぎないというので御座るか?」               
「いかにも!」                 
土門が頷く。                  
「菱山殿と土門殿もその片棒を担いでいたとは?」             
「拙者等も必死だったし、その上、脱藩組となれば状況も厳しく、許されよ」                       
「では、仮に拙者が今日ここに来なければみすみす『犬死』にしたで御座るか?」             
「まあ…」                   
「んぐーっ…本来ならばここで斬り捨てたいとこだが…」                      
山中は刀の束に手を置く振りをする。                   
「まあまあ、山中殿、落ち着いて…」                   
慌てて菱山が止めにはいる。

「拙者等も謝って、こうして全てを打ち明けているわけだから…」                              
山中は人気のない川原の土手から空を見上げる。              
(う〜ん、ここで事を荒立てて斬り合いになっては拙者に勝ち目はない。しかも、金が欲しいのは事実…)                                   
「合い分かった。今回の件はお主等の顔に免じて水に流そう」

「おーっそうか、分かってくれたか!?これで山中殿は同士、なあ、土門!」                 
「そうだ、同士だ!」              
三人はがっちりと手を握り合う。                                 
「ところで、話の途中になってしまったが、先程の御灸を据えるというのは?」            
菱山が土門に話の続きを催促する。

「うん。だが、さっきは半分冗談のつもりだったのだが、山中殿も仲間になった事だし、現実味を帯びてきた…ここはまずい故、場所を変えよう!?」
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