彼岸と此岸の狭間にて
〔3〕
時は霜月(11月)の一日(ついたち)、夕刻。
「ただ今戻ったぞ!」
「これは兄上、今日はお戻りの日ではないのでは?」
「うん、これから用事があるので出掛けるが、その前に寄ってみた」
「そうでしたか!?」
家の中に上がり座り込むと奥の部屋から幸恵と子供達が顔を出す。
「旦那様お帰りなさいませ」「父上、お帰りなさい」
「おう、幸恵、燐、加奈、珠美、元気でおったか!?」
「旦那様、良き知らせが!」
「何だ?」
「雪乃さんにお子が…」
「真(まこと)か、雪乃?」
「はい…」
雪乃は顔を赤らめ、か細い声で答える。
「それは愛でたい!!吉兆の印しじゃ!」
「旦那様、何でございますか、その吉兆の印しとは?」
「何でもない。それより、葵殿には知らせたのか?」
「いえ、まだ…」
「何をしておるか、はよ、知らせて参れ!」
「今…ですか!?」
「そうじゃ、ぐずぐずするな!『幸せ』が逃げてしまうぞ!」
雪乃は急き立てられるように家を出て行く。
「旦那様、何かあったので?」
「ん、何故?」
「いつもと様子が違うようにお見受けいたすものですから…」
「何を言うておる!いつも通りじゃわい!のう、燐、加奈、珠美!」
三人の子の頭を撫でる。
山中はこれからの事を考えると高ぶる気持ちを抑えれずにいた。
時は霜月(11月)の一日(ついたち)、夕刻。
「ただ今戻ったぞ!」
「これは兄上、今日はお戻りの日ではないのでは?」
「うん、これから用事があるので出掛けるが、その前に寄ってみた」
「そうでしたか!?」
家の中に上がり座り込むと奥の部屋から幸恵と子供達が顔を出す。
「旦那様お帰りなさいませ」「父上、お帰りなさい」
「おう、幸恵、燐、加奈、珠美、元気でおったか!?」
「旦那様、良き知らせが!」
「何だ?」
「雪乃さんにお子が…」
「真(まこと)か、雪乃?」
「はい…」
雪乃は顔を赤らめ、か細い声で答える。
「それは愛でたい!!吉兆の印しじゃ!」
「旦那様、何でございますか、その吉兆の印しとは?」
「何でもない。それより、葵殿には知らせたのか?」
「いえ、まだ…」
「何をしておるか、はよ、知らせて参れ!」
「今…ですか!?」
「そうじゃ、ぐずぐずするな!『幸せ』が逃げてしまうぞ!」
雪乃は急き立てられるように家を出て行く。
「旦那様、何かあったので?」
「ん、何故?」
「いつもと様子が違うようにお見受けいたすものですから…」
「何を言うておる!いつも通りじゃわい!のう、燐、加奈、珠美!」
三人の子の頭を撫でる。
山中はこれからの事を考えると高ぶる気持ちを抑えれずにいた。