彼岸と此岸の狭間にて
「あっ、突然、すみません。佐衛門殿と少し面識があったものですから…」              
「敵討ち、とか?」               
「いや、別にそういうわけでは…単なる興味本位ですよ。はははっ…」                      
「そう……金を盗んだ二人組は林の中に隠して置いた馬に乗って甲府の方に向かって行ったとか…」

「甲府ですか!?」               
(馬だったら山中さんも追い付けないのじゃないのか!?)                     葵は一抹の不安を覚える。                                                                                              



大月宿に山中の姿はなかった。仕方なく、葵は菱山と土門の情報を得る為、あちこちで話を聞いてみるが、大した話は聞かれなかった。                       
(取り敢えず甲府まで行ってみるか!?)                                                                                                                                         
甲府ではまず『丸屋』を訪ねてお悔やみを述べ、その後に『高砂』に行ってみた。そこで重要な情報を得る。              

「土門様が見えられまして、飲み代の『付け』を全部払っていかれました」              
「ひとりだったんですか?」

「ええっ…」                  
「どこに行くとか聞いていませんか?」                  
「はっきりとは…ただ、信州の方に行くみたいな事は…」

「信州ですか?…どうもありがとうございました」                         
(信州と言えば長野県か!?これから雪の季節だから追っ手を撒くには良い場所かも…)
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