彼岸と此岸の狭間にて
「山中〜っ、誰だ、それ?土門、お前知っているか?」

「そんな死んだ奴の事などとうに忘れたわ!!」              
「死んだ!?殺したのか、貴様等!?」                  
「心配するな、すぐにあの世で会わせてやるよ、なあ、土門…」

「その通り…」                 
「庄三郎殿、佐衛門殿のみならず、山中殿まで…許せん!!!」            
葵はいつの間にか刀を抜いていた。                                                             
と、その時、菱山と土門の目が点になったか、と思ったら急に腹を抱えて笑い出した。                     
「あははははっ、土門、見てみろ、ひいひいひっひ!!」

「ぷっはははっ、あ〜っ、腹が痛い…ほーっほほほっほ…」

「『竹光』だよ、『竹光』…久しぶりに見たなあ、『竹光』。ひっひひひ…」             
(しまった!!すっかり忘れてた!!)                 
手が『カタカタ』と急に震え出した。                   
「あ〜っあっ、震えちゃって…」                     
そう言って菱山は刀を抜く。それは太陽の光を受けて不気味な青白い光を放っていた。                     
その瞬間、葵の右目は激痛に襲われ、目の前に『血の海』が表れたかと思った途端右目から視力が消えた。               
土門が投げた短刀が葵の右目を貫いていた。                
「うううう……っ…」

もんどりうってその場に崩れ落ちる。                   
直ぐ様、駆け付けた菱山と土門に体を仰向けに押さえ付けられる。
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