彼岸と此岸の狭間にて
「吉保公の後ろ盾があれば『鬼に金棒』でございますね!?」

「そうなのじゃが、重い腰を上げてくれそうにない!」

「では?」                   
「我々だけで決行するしかあるまい!」                  
「そうでございますか?集めた浪人達を如何いたしましょう?」              
「折角『金子(きんす)』を餌に集めたわけだからのう!?菱山、何か良い案はないか?」            
「取り敢えず適当に仕事を与えておくというのはどうでございますか?」               
「例えば?」                  
「そうですねぇ、吉保公の警護にあたらせるというのは!?」            


「…そうじゃのう、それでいくか。吉保公となれば浪人達の士気も挙がるだろうし、新井と間部の討伐の『大義名分』にもなる!」

「では早速手配を致します」                 
「頼んだぞ。浪人達は大事な『斬り込み隊』で我々の盾になってもらうのだからのう」                     
「『命の盾』でございますな!?」                    
「浪人どもの『命』なぞ『虫けら』同様でどうなろうと知ったことではないわ!」                   
「荻原様も人が悪い!」             
「ん!?菱山、そちも浪人ではないか!?」                      
「私は『特別扱い』とのお約束でしたが!?」                 
「そうかあ、そうであったのう!?あははははっ…」                         
荻原の笑い声が閑静な邸内に響き渡った。
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