彼岸と此岸の狭間にて
甲府に入ったのが夕刻辺り。
甲府、つまり甲斐国は戦国時代、武田氏の領地であったが、長篠の戦いで織田信長に負けて以来、織田家、徳川家が支配する事になる。
そして、五代将軍綱吉の時、その寵愛を受けた『柳沢吉保』が甲府を治め、隠居後はその長男の『柳沢吉里』が治めていた。
茂助は早速、町の中程にある『丸屋』を訪れ商談を済ませる。
「紫馬様、お願いがあるのですが…」
「何でしょう?」
「明日、お伊勢を隣の韮崎まで送って行って欲しいのです…本当は私が送って行く予定でしたが、明日、行かなくてはいけない所が出来ましたので…一日もあれば行けると思います」
「良いですよ」
「ありがとうございます。女の、特にお伊勢のような若い女の一人旅は危のうございますから…ほら、お伊勢もお礼を言って!」
「ありがとうございます」
丸顔のぽっちゃりしたお伊勢が『にこり』と微笑む。
「では、宿の方に参りましょうか?今日は『丸屋』のご主人がご馳走してくれるそうですよ」
「やったあ!!」
脇でそれを聞いていた勘吉は天地がひっくり返るかと思う程の大はしゃぎ。それを見て葵達も大笑いしていた。
日はすっかり落ち、家の明かりだけが人の営みを証していた頃、葵達は丸屋の主人に案内されて甲府一という料亭『高砂(たかさ)』にいた。
確かに今までの旅籠で出されてきた料理とは違って、味、新鮮さ、種類などどれをとっても現在の物にも劣らない感じがした。
甲府、つまり甲斐国は戦国時代、武田氏の領地であったが、長篠の戦いで織田信長に負けて以来、織田家、徳川家が支配する事になる。
そして、五代将軍綱吉の時、その寵愛を受けた『柳沢吉保』が甲府を治め、隠居後はその長男の『柳沢吉里』が治めていた。
茂助は早速、町の中程にある『丸屋』を訪れ商談を済ませる。
「紫馬様、お願いがあるのですが…」
「何でしょう?」
「明日、お伊勢を隣の韮崎まで送って行って欲しいのです…本当は私が送って行く予定でしたが、明日、行かなくてはいけない所が出来ましたので…一日もあれば行けると思います」
「良いですよ」
「ありがとうございます。女の、特にお伊勢のような若い女の一人旅は危のうございますから…ほら、お伊勢もお礼を言って!」
「ありがとうございます」
丸顔のぽっちゃりしたお伊勢が『にこり』と微笑む。
「では、宿の方に参りましょうか?今日は『丸屋』のご主人がご馳走してくれるそうですよ」
「やったあ!!」
脇でそれを聞いていた勘吉は天地がひっくり返るかと思う程の大はしゃぎ。それを見て葵達も大笑いしていた。
日はすっかり落ち、家の明かりだけが人の営みを証していた頃、葵達は丸屋の主人に案内されて甲府一という料亭『高砂(たかさ)』にいた。
確かに今までの旅籠で出されてきた料理とは違って、味、新鮮さ、種類などどれをとっても現在の物にも劣らない感じがした。