彼岸と此岸の狭間にて
「そうでしたか!?」              
「土門殿は一体何用で甲府まで?」                    
「荻原様の使いでこちらに参りました」                  
(荻原って誰だ?)             
「実は、明日、土門様、茂助さんと私の3人で藩主の『柳沢吉里』様に会いに行くのですよ」               
(茂助殿の急用というのはその事だったのか!?)             
「それはまた…?」               
「詳しくは申せませんが、お金の事です」                                         




夜の10時頃に高砂を出て佐衛門が用意してくれた旅籠に入る。                               


風呂から戻ると部屋では茂助が高鼾で、勘吉はぐっすりと既に眠っていた。隣のお伊勢の部屋も静かだ。もう寝たのだろう!?            
そして葵も床に就くとすぐに深い眠りに落ちた。                                                                                                                             



「葵殿〜っ!」                 
(うん!?…山中殿の声だ!元気がないようだが…)              
「葵殿〜っ!」                 
(更に声が弱々しくなっていく…)                    
葵は声の方を見る。               
「山中殿!!どうしたんですその姿は?」                


山中が正座して血まみれになっている。そして…腹には…


あの…『竹光』が…


突き刺さっていた。
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