Rose of blood
私を抱きしめるシエルの体は震えていた。


それほどバンパイアに襲われ血を吸われた人間は、恐怖に顔が歪むんだと思った。


私もシエルを抱きしめ返した。



「怖いよ」

『だったら……』

「怖いよ……シエルを失うのが怖い」



牙をたてられることよりも、痛みよりも、シエルがいなくなってしまうことの方が怖い。


体を離し両手でシエルの顔を包みこみ笑って見せた。



「ずっと傍にいて……元気な姿のまま傍にいて欲しいの」



シエルは泣いてしまいそうな程切ない笑みを見せ、そっとキスをしてくれた。


目を閉じると柔らかい感触が首筋に落ちてきて、鈍い痛みに襲われた。





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