Rose of blood
ジョシュには先に執務室に戻るように伝え、俺は今アマンダを見送る為門にいる。


今日は珍しく部屋に行きたいと言わなかったな。


こんなことなら瑠花をセリアルのところへ行かせる必要はなかった。



「シエル様、お忙しいのに時間を割いて下さってありがとうございました」

『いえ、お気を付けてお帰りください』

「……はい」



寂しそうな顔を見せるアマンダ。


女の仕草や表情で何を求めているのかぐらい分かる。


だが呼び止める理由もない為気付かないふりをした。


アマンダがすぐ近くまで歩み寄ってきたかと思えば、俺の手を震える手で握り本の少し背伸びをした。



「では……また……」



唇が離れると恥ずかしそうに頬を染め、顔を俯かせたまま馬車に乗り込むアマンダ。


いつも控え目なアマンダがそんな事をするとは思っていなかったので、驚きのあまり暫くその場を動く事ができなかった。






< 141 / 534 >

この作品をシェア

pagetop