Rose of blood
感情などあの時に捨てたはずだった。


忌々しい過去と共に。


それが今はどうだ……たった一人の女にこうも簡単に乱されている。


すぐにでも殺しておくべきだった。


今は……いや、考えるのは止めておこう。


迷いは敗北を生むだけだ。


後三ヶ月でけりがつく。


そうすれば、また何もなかったかのように全てが元通りになる。


小さな音が三回部屋に響き渡った。


もうそんな時間か。



『入れ』

「失礼致します」



女はいつものようにテーブルに食事を並べ始めた。


だが、どことなくいつもと感じが違うような気がした。






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