Rose of blood
トレーの上には空の食器を重ねてのせている。


私はホットチョコレートをマグカップに注ぎ、アイシャの前に置いた。


アイシャはそれを手に取り、潤んだ目でマグカップの中を覗き込んでいる。



「ホットチョコレート……よく母が作ってくれてたの」

「そうだったの……」

「私ってこんな容姿でしょう?だから父は私を表に出したがらなかった。でも、私には母とアマンダ姉様がいたからそれでも良かった」



確かにアイシャは純血ではあるが、目立って金色の部分があるわけではない。


だからといって城に閉じ込めるなんてどうかしてる。


それに今はもう違う。



「最近鏡で自分の姿を見た?」

「いいえ……鏡は嫌いなの」

「あなたの瞳は綺麗な金色をしているわ」

「ッッ!?」



アイシャは慌てて鏡の前に立ち、自分の瞳をまじまじと見始めた。


驚きすぎて言葉を失っているようだった。






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