Rose of blood
ずっとお城の中で生活していて、外部の者とは接していないはずなのになんて頭のきれる子なんだろう。


それにきっとこの子には国を担っていけるほどの器も具わっている。



「アイシャは無理やりここに連れてこられたの?」

「……知らなかったの」

「え……?」

「初めて父に出かけようと言われて、嬉しくて舞い上がってた。でも連れてこられたのはここで……私は捨てられたの。馬鹿でしょ?それにッッまさか母まで……ッッ」



私に涙を見られまいと、両手で顔を覆っているアイシャ。


だが涙はどんどん顎まで流れ、ぽとぽとと零れ落ちている。


私はアイシャを抱きしめ、背中をさすった。


たくさん辛い思いをしているのに、気丈に振舞おうとするアイシャの姿はとても痛々しく見えた。



「泣きたいだけなけばいい。たまには自分の為に涙を流すことも必要よ」

「ッッゥッッッッッ」



アイシャは嗚咽交じりに涙を流し、涙は止まる気配はなく泣き続けている。


今は何も考えずにたくさん泣く事が、アイシャの心を軽くする一番の方法だと思った。






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