Rose of blood
「ごめんなさい……取り乱しっちゃって……」



そう言って乱暴に涙を拭い笑顔を作るアイシャ。


こうやっていつも周りに自分の感情を気付かれないように、笑顔を作って生きてきたんだろう。



「そんなに乱暴に擦ってはダメよ。綺麗な顔がすれて赤くなってしまうわ」

「あはははっ!!私は綺麗なんかじゃないわ。綺麗っていうのは貴女みたいな人のことを言うのよ」

「私はバンパイアなのに健康的な肌の色をしていて、ピンクブラウンのショートヘアーがよく似合うあなたの方が魅力的に見えるわ」

「そ、そんな事言われたの初めてで、なんて返していいのか分からない……」



頬をほんのりピンク色に染め、微笑むアイシャは本当に可愛らしかった。



「こういう時は素直に"ありがとう"って言えばいいんじゃない?」

「……あり、がとう」



この日初めて私たちは胸の内を言葉にし、笑い合うことができた。


アイシャの温かい心に私の心の靄が少し晴れていく感じがした。






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