できちゃった結婚〜もしも俺が赤ちゃんになったら〜
「ほぉ〜ら真紘、綺麗でしょ?」
希はベビーカーに寝ている俺(真紘)をひょいと持ち上げ抱っこすると、一面に広がる海を見せてくれた。
希と付き合い始めた高校生の時からよく二人でデートした砂浜。
あの頃はまだ結婚するなんて想像すらしてなくて、将来の夢とか希望もまだよくわかっていなかった。
いや、あの頃だけじゃなくて…正直、真紘がお腹にいるってわかったころまで結婚なんて考えてなかった。
希のことはすっげぇ好きだし、ずっと一緒にいたいとも思ったけど、結婚なんてまだまだだって思ってた。
だから、希が妊娠した時、正直不安だった。
金、仕事、生活はもちろんだけど…
それ以外に、責任とか意志とか…
俺にはあるのかって。
でも、俺以上に不安に感じていたのは希だろう。
初めての妊娠。
初めての家事。
初めての子育て。
なのに、
あいつは今まで文句も何も俺に言わなかった。
家に帰ると「おかえり」ってご飯作って待っててくれてた。
それなのに、昨日俺はなんて言った?
それが当たり前??
バカじゃん、俺。
希がいるから頑張れるんじゃん。
真紘がいるから頑張れるんじゃん。
家に帰れば、待っててくれる人がいるから……
「おかえり」って笑ってくれるから……
だから、幸せだった。
幸せなんだ。
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